どうしてだろう。今日になって、思いのほかに短い一年だったと思うのです。そうです。肝心な文庫番のお仕事がはかどっていないのです。この頃どん兵衛だけでなく、チキラー島にも入り浸っていたせいでしょうか。また、今までにない、父のインタビュー構成になった語りをアップしようと思い立ってしまったからなのでしょうか。この二・三日、年末の忙しさが倍増しになっています。そうそう、ネットのコミュニケーションも、すぐ応えがあるので度々はいりこむようになってしまっています。
　今日はほとんどがお節デーなのですが、新解放理論にかかりっきりで、年賀状などは遠い彼方です。一年を振り返る余裕などなく、２００８年にどうするのかばかりで、過ぎています。この一年いったい私は何をしていたのでしょう。

　この年末年始は今日から連れ合いの休みになりました。自動的に株式会社マハラバ文庫も文庫番のホームページもお休みになれば良いのですが、そうはならないのが悲しく、せっせとページアップもお仕事にも午後出かけます。その予定ですから、朝からホームページの準備をして、それから、ベランダ側の障子を外して桟も枠も洗ってしまいます。義父母の部屋の障子も浴室で洗っておきます。その二部屋の障子を洗い終えた頃、連れ合いは起き出してきますから、後は寝室の６枚の障子を洗います。先に洗ったものは二階で連れ合いが貼り始めています。障子を洗いながら色々考えます。ベランダ側の障子は娘が、貼ったたままですので、段貼りの仕方が良くわかっていないようです。義父母の部屋のものは、さすがに下の段から貼ってありますが、前の糊が良く落ちていなかったり、ご飯粒で穴貼りしてあったりです。桟も木綿糸で縛ってあります。それらを洗いながら、衣食住がなぜ、日本語で衣食住なのかという、藪川の酔夜の終わりの無くなった会話を思い出します。住というものは、至って身体的な延長にあると、暮れに貼替えしながら感じます。もともとの住みかの素材というものは、人間が手で自分達で作れる範囲のものではなかったのかと思うのです。そして、私達の文化が大掃除ということを、年があらたまる時を迎えるためにするということは、あらたにする再生の儀礼なのだということです。そして、毎日繰り返す普段のお掃除が実は同様に深い思索に繋がっていることであるということです。道元であったか、禅のことばに両辺を清めるという言葉があったと思うのです。そんなことが、浴室で、紙と木を水（残り湯）で洗うという行為の中で理解していきます。
　午前中にできるだけやってしまおうと、濡らした建具を干しながら、夫婦でもくもくと乾いたものに、貼っていきます。お米からの糊ではなく障子紙に付いていた合成糊を使います。刷毛は一つあったのですが、二人の手があるときに道具もやはり二人分が良いので、私は、浴室のタイル目地の汚れ落とし用の業務用馬毛ブラシを、刷毛代わりに使います。まさかこういう用途に、使われるとは、メーカーでは想定していないだろうと思います。午後もぎりぎりまでしましたが、　出かけて帰宅の途中で電話すると、最後の一枚をしているところということでした。

　どうしたわけかいろいろな打ち合わせがまだあるのです。年末のような清算もありました。結局一日外にいた日ですが、来年２月にささかみで企画を一つ立てることが進んできました。それはそれとして、この頃ネットの中でのコミュニティの縁でしょうか、思いがけないメッセージが届いていたりします。年末だというのにぎりぎりまでまだ動きそうです。リアルとサイバーの相乗になるでしょうか。年末にばかり気を取られていると、毎月の月末でもあるのです。
　暖かいままの年越しになるのでしょうか、昨夜のうちに連れ合いがお餅を切りました。毎年義父が硬くなるんじゃないかと心配しながらはじめそうになっての事でしたが、今年は心配はしても手をださないうちにすっかり切ってしまいました。量も少ないので冷蔵庫に入れてあります。閑居山では餅搗きの日にしていた日です。お正月用に昨日から干してあった白菜を塩で漬けます。
　それにしても、です。やっているうちに、やる事で、路ができる事があるのですね。そう信じられるのです。

　お願いできる人が、考えていた以上に何かをしてくれることって、とても嬉しいですよね。そしてお互いに自分のためにではないことで動ける。そんな人達のネットワークがあるから、協同という言葉がまだ、この世紀になっても生きている。お互い様。お蔭様。でしょうか。もう私達の年代はあくせくと功成り名とげるということも望むこともなく、生きてきた事の中で、伝えることや他の人に残していけることがあったらと、考えたいものです。せっかく長寿社会になって、高齢になっても何かの成果を作らなければならないのではなく、手を繋げる人の輪が少しでも増えたと感じられる、長い期間をお互い様と助け合える社会をつくれる可能性ができてきたのだから、若い世代が世代間格差などを訴える目の前のことよりも、お金だけではないものを見えるようにしていく責任の世代なのだと思います。初めて高齢社会を迎えている、親世代を励ましつつ、若い世代にもそのことが、個の自立と協同によってできていると、インターネットコミュニティだけではなく、実際の暮らしの中でも、当然の行為が人間なのだとしたいものです。お漬け物のアンケートをお願いした人が昨夜遅くまで取りまとめてくれたとメールが来ました。

　風邪が長引いていて、ぐずぐずとしている連れ合いが、三時頃から年賀状に取り掛かっています。私はそんなに急くようなものとは思っていないので、のんびりですし、今年は昨年よりも枚数を減らしたいと思うのです。母方には出さないで済みます。義理の中であるし出た家の出た家ですから、気にしなくて良いのですが、減らしていく口実になります。
　まだまだ、企業人でいる連れ合いも、退職された方々などへの便りも少なくなっているとは言え、やはりかなりの枚数になります。共通の知人も多いので、そのような方々のものはすべて任せておきます。こたつで文面を打ちながら、来年の言葉を思案しています。大伴家持にしようかと言います。えっという表情を私がしたようで、さらに考えていますが、何か文章ができたようです。そしてコンセントが無いから、と私がプリンターを使う時には電話のプラグを抜いて、プリンターのを差し込んで使うのですが、何とプリンターをこたつに持って来て、三畳の部屋のタコ足にしてあるコンセントを使って刷り上げています。
　私は午前中に換気扇の掃除を済ませたので、松前漬けの用意にスルメを切ります。そのうちにスルメの足を炙ってくることになりました。銀杏も煎って、午後は過ぎていきます。宛名書きが済んだといって、風邪薬を買い足しに行くのと一緒に投函してきたということです。　この人から見ると私はだらだらしている様にみえるのでしょうね。

　が欲しいのは、この国の政治経済、そして業界の体質。そして、痛ましいニュース。でも私が信じてみるのは、ベランダの火鉢たんぼの棚田。雨の少なかった秋のせいや、どう水抜きなどの管理をするのか分らないものでしたが、一昨日の雨がバケツに溜まっています。やはり水と土にはなんらかの浄化作用があるのではないかと、容れ物に移します。そして他の植木鉢にも水遣りをします。今日は暖かい午前中です。ベランダの植木鉢は今年の秋はどちらかというと、とても忙しくて、充分に見てやれなかったのですが、もう一つ、散々、花の種袋や球根を購入して楽しんだけれど、ここらへんで、何が出てくるのかじっくり待ってみようと思うのです。母のところから来た鈴蘭は、もう来年の芽が出ています。山椒や桧は冬の枝になっています。フリージアでしょうか。秋のうちに葉が伸びてしまったのが、間違ってしまった風情で存在しています。寂しいといえば寂しい様子ですし、雨で土がベランダにも飛んで汚れています。シッパーもあります。
　そんな様子を眺めるにも小春日和ですから、お風呂の残り湯で畳みを拭きます。今月はじめに、ガラスもざっと拭きましたから、だいぶ大掃除に集中せずともよさそうです。押入れの中もゴソゴソとしますが、パソコンや電話の机周辺の整理が一番です。

　前からそうでしたが、ますます時間の使い方がいい加減になってきました。やらなくても良いことばっかりはじめてしまって、終わっていない事も幾つかあるまま、年末もここまで来てしまっています。お金を残そうなどとも思わないし、すべては何時かは朽ち果てる。親が祖父母がと言ったって、縄文時代の祖先は分らない。だから、何かを後世になんて考えなくても良いしなんて思うのですが、自分の今年の中では、もう少しまとまった事ができて年を越すつもりでした。
　何より進んでいないのは、減量です。幸な事に増減ゼロで、現状維持の年でしたが、自分では二十代の事が基準にあるから、無いものねだりではなく、あるものがうっとおしいだけの、年末になります。そうそう懐具合はますます厳しくなっています。でも来年はお年玉のもらえる有資格者はいないはずですが。どうも義父母との同居というのは、孫を甘やかす事が生きがいであり、お年寄りが用意して私達が、出さないという一線ができません。これは連れ合いに任せましょう。
　そうなのです。時間の使い方がいい加減なのは、きっと昔の人も見ていて成句となったのですね。貧乏閑なしです。
貧しい事は恥ずかしいことじゃあありませんが、やるやると言っていてできないことがあるのは、自分で恥ずかしいものです。

　今日は錦糸町集合の子供達を外手小学校まで引率してクリスマス会です。どきどきしながらになります。この一月胃が荒れたり、気分がへこんだ事の大部分は予測不可能の子供達の事だったようです。でも誰かが連れて行く仕組みで今年は活動しています。昨夜受け取った名簿ではどうやら女の子達ばかりです。何とかなるかと、雨気味の空を気にしながら、電車で錦糸町に向います。集合場所には、まだ誰もいません。交番で万が一、私一人で引率することになったらと道順を詳しく聞きます。女の子達が集まってきます。一人直接会場に来る事になったと携帯に電話が入ります。時間調整していたともう一人のスタッフが来て一安心です。もう一人名前がありますが同じ学校の子達が、昨日直接行くって言っていたとはなします。では出発しようというところに、お母さんが連れてきました。間に合って良かった。バス代？歩いて行けるところ。親水公園を通っていきます。と前後に大人がついて、歩きます。完全な再自然化ではないのですが、水鳥がいます。紅葉の最後も観ることができました
　会場について、玄関で履物を替えていると、現地集合の子達も受け付けることになります。兎も飼っています。鮭が孵化したばかりで、イクラのようなものが水槽にいます。いづれ川に放すということですが、東京に鮭は遡上するのでしょうか。
　さてさて、材料も揃って、カレーライス作りです。私が男の子班になるところでしたが、この小学校で教職にあったスタッフが助太刀してくれました。あとの班には保護者も入ります。いう事で女の子班に付きましたが、これはこれで大変でした。何か一つの作業を我もわれもとやりたがり、一人づつの作業の到達が同じじゃないと嫌なようです。皆が女王様だか王女様だかになれるように
同等に作業をさせないとなりません。統率されれば物事の進む、いや違った見かねて保護者が殆どをしている男の子班とは違います。そしてゴミを捨てにいくような事はしたがりません。廊下へ出て壁新聞というと、さっと移動して鍋はうっちゃっています。
　それでもやっと出来上がります。一緒に食べながら、無洗米の事を話します。場合によって時々使うという家もあるようですが、そんなに知っている子はいませんでした。でもこの女の子たちも、お手伝いとしてお米研ぎをしていると聞いて安心しました。
　ビンゴも済んで片付けて、サッカーチームの子達も混ざってのカレーになりましたからお母さんたちが片付けを手伝ってくれ助かりました。帰りはどうやら、私一人でつれて帰ることになります。バスという子とまた公園を行きたいという子とバラバラ。それでも腹ごなしという言葉があるじゃないかと歩いて帰ることにしますが、方向音痴な私。公園に行きたいと言った子に、先に立ってもらったりして急がせます。公園も通り抜け、駅に戻ってお母さんたちに引き渡します。もうお帰りになっていいですよ。と言われ電車に乗ったら、行き違いになったと電話があったと連絡が入りますが、お友達のお母さんと落ち合えたようです。もう引率って大変。判断が臨機応変です。そんな冬至です。　

　明日は雨水探検隊の活動日。今月何するかといえば、例年していたおにぎりパーティの収穫祭が、探検隊の稲を雀にすっかり食べられてしまって収穫はできなかったのですが、やはりお米を食べる機会をみんなで持とうと、お米を下さった方がいて、カレーライスづくりとビンゴ大会でのクリスマスパーティをする事になりました。
　月曜日締め切りでしたが、火曜日の朝にはまだ、１０人の申し込みだと聞いたのに、子供３０人に大人が１０人の大人数になっています。打ち合わせの時に、食べる時は来るのよと話されていたとおりです。分担して買い物をします。私はじゃが芋、玉葱、人参にカレールゥです。世話人からの電話では、東あずまの八百屋が安いからと指定されました。あまり近所での買い物をしないので、どこが安いやらの感覚の無い私は、良く知っているなと感心します。ついでに宅急便ものを出して、督促の着ていた本も図書館に返してなど、出るついでのいろいろを考え用意します。不器用な私は宅急便の荷物の梱包も苦手です。梱包は連れ合いが専門家でした。いる時にはお願いするのですが、一人でするとべこべこの包みができます。
　簡単に考えていましたが、じゃが芋４袋、玉葱４袋、人参３袋にカレールゥの大箱４個を入れた荷物は、自転車の前籠には納まりません。バックと小さい方の荷物を左に下げて、じゃが玉の上に二冊本を乗せてすすみます。あずま図書館のブックポストまで、自転車をゆっくり運んで、ポストに返して、少し動きやすくなったので、押上駅の方に向かって行きます。９９ショップもあったのに、こちらの方が安かったのじゃあないだろうか。など思います。娘は９９ショップでのバイトもしていましたが私は入った事はありません。
　やっと、世話人の学習塾の玄関に荷物を下ろして、帰ります。左の手首には重さが残っています。脚にもいつもより力を込めていたようで、少しゆっくり自転車をこぐ事にしました。私一人の時はそんなに必死に自転車漕ぎしなくていいじゃないかと。　

　縄綯いの話しをしていました。年配の人は自分のやった体験も話しはじめてくれます。ある程度の年齢の人達には、原体験の中にその風景があるようです。夜になると毎晩のようにやっていたとか、庭に藁打ちの石があったとか、自分はできなかったけれど親がやっていたなどです。そして身振りがついてくるのです。
　私前後の年齢から、体験が無くなっているのですね。農家で育っている人も減っているのでしょう。話しても、そうですかという程度の反応です。石油素材のビニール紐が当り前になってきていますからね。もっと若い世代は、門松や、こもかぶりのお酒の縄を見たことはあっても、日常的に縄が使われていたという記憶ももっていないのでしょう。
　義父に細い縄を見せると、昔は縄をきれいにする機械もあったと言います。藁を送り込んで、足踏みで縄を綯う機械なら知っていましたが、縄をきれいにするって何の事でしょう。燃やしてさ。え、最後に縄だけ、燃やして始末するほど使っていたのかと思ったら、長くできた藁縄をさっと通して、一瞬で表面のけば立ちを燃やして、ツヤのある使いやすいきれいな縄にする機械があったというのです。

　家にいるということは、こちらからの連絡もすれば、その返事も来たりで、それを幾つかこなしていると、一日中が過ぎていきます。台所と茶の間、洗面所、浴室のリフォームをしてもらったゆたか建設http://yutakakensetu.com/さんから、ホームページに使わせてもらったという電話もありました。
　改装前と改装後を今の時点で見ると、昨年の今頃が家の傷みのピークで、私の決断の時であった事が懐かしく思います。どのように、義父母に納得してもらいながら直せるのか。どうしても二世代がこの極狭い条件の中で、それぞれのあり方を認めながら、大掛かりな改装に踏み切れるのか、どう切り出すのか、そして見積もりはどれくらいになるのか。どこに施工を頼むのか。
　いろいろな場面はありましたが、結果としては皆が満足できるものになっているのです。面積自体が増えたわけではありませんから、狭いままですが、片付けることがしやすくなったものです。
　さて、今ある連絡事項については、一体なんの事やらという皆さんにはなるべく早く、ご協力をお願いできるように、伝える場をつくらないとなりませんね。

　昨日が瓶・缶などの資源回収日でしたので、家回りを普段見ない嫁である私が、なぜかリサイクルは担当者ですので出しに行くと、塀の外のアスファルト道路に土が散らばっています。義父の植木鉢からのものでした。家に入って倒れたのかしらと聞くと、いたずらされているようだと言います。お隣の家のものも、抜かれたりしているようです。
　きっと、朝早くに通る人だね。わざわざ、何のためにするんだろうね。植木を抜かれる程度なら良いけれど火でもつけられると大事だね。と話しますが、ある意味薄気味悪い事です。日中ならば子供の悪戯と考えるのですが、そういう時間帯ではないようです。この通りも用心が必要なのでしょうか。誰のことも疑わず、いたずらというか、冒険なら認めることのできる通りであると、考えたいのですが、現実には薄気味悪さが先立つものです。８０過ぎの年寄りでも義父母の居るということを心強く思わないとなりません。
本当は暮らしの中での他世代で生活することによって学ぶことのできる良い点まで、捨ててきたのが二十世紀の後半分だったのでしょう。姑のあとを嫁が継ぐなどという考えたくもない言葉がありますが、良いことであるならば、笑顔で歳をとっていけるならば望ましいことです。しかめっ面の一家にはしたくはありません。

　今日から連れ合いはコートを着て出勤です。私もセーターの上から羽織っていこうと、昨日のコートに手を通そうとすると、まだフードの周りのファーが煙っぽいので吊るしておく事にしました。今日は布団も干したのですが、薄曇りのままで温まりません。でも、出かける前に取り込んでおきます。今朝は洗濯物が沢山でした。これは出しておきましょう。
　コートは薄手もので、結局お昼を食べたり、資料をそろえたりしているうちに、また時間ぎりぎりになってしまいます。ライナーを付ける時間がありません。黒川商店のホームページは、年内は今日のお手伝いで最後になります。まだまだ、理解しきれていないレンタルのオンラインショップのデザインが思うようではありません。課題を残しながらの仕事仕舞いになります。でも幾つかこなせなかったことが、今日はできました。私はホームページ製作の技能はありません。これ以上は、無理に身に付けるより、自然に学べる事があれば、改善するのですが、肝心なのは、コミュニケーションクリエイトとは何かを表現することにしてみたいと考えながら、夜道を帰宅します。ベランダで冷え切った洗濯物が出迎えてくれます。
　連れ合いは、朝せっかく着て出かけたコートを置いて帰ってきました。なんだか鼻声です。

　夜中の石塚家の二階で、一人縄を綯う姿は誰にも見せられません。だってせっかく、身体が覚えた感覚なのです。掌で撚り、綯う。なんて素晴らしい作業なのでしょうね。どうして今までする機会がなかったのでしょう。子供時代に縄は身近にありましたし、一番近所の農家には良く遊びに行って、その頃は機械綯いでしたけれども、きっとあの小父さんもできたのだろうな、と思い出すのです。この前まで、生活の中にあった技を途絶えさせてはならないし、これは縄文人の末裔ができなければ可笑しいことです。崖っぷちに一人で取り残されたら、その辺りの草やら蔓やらで、下に降りられるように私はなったのです。生存の可能性が一つ増えたのかもしれません。ますますしぶとくなるでしょう。
　寝不足で、腕に疲れを残していたでしょうか。今日の作業は昨日の蒸しあがったお米と麹の混ざったものを、水にふやかし、掌で擦り合せ、粒を握りつぶすようにします。午前中全部をその時間にします。醗酵文化の学習です。昨夜は夢の谷には雪が降ったのです。昨日の火の番とは違い、凍るような、冷たさの中に手を入れるのです。この水は沢の水です。山田錦も有機なら、麹も有機米のものです。そして外は雪。黙々とした作業の中に雷の音が響きます。雪下ろしと呼ばれるものだそうです。いきなり戸が開くと雪女でも入ってきそうだと男の人達が思うのが面白かったです。鈍い私にはその感覚はありませんでした。最初のうちの粒粒感から、ねっとりとした糊状の液になってきます。誰でしょう舌切り雀が舐めたのは、きっとこういうものだと考えるのは。私達の子供時代は障子の破れを貼るのも、封筒の封をするのも、そして衣服に糊付けするのも、お米粒からできたのです。ご飯釜の最後を洗った水を手拭いを縫った袋に入れて、揉み解した糊をたらいに延ばして、糊にしたのです。
　そんな事を思い出しながら、作業します。手はつるつるになりますが、足腰は痺れてきます。身体をもって、何かが出来上がる楽しみになるのです。ここまでやったら、醗酵文化は極めないとならない、と話しは来年になっています。
　今回のささかみは、単に体験し学ぶだけではなく、伝えなければならなかった事の実現への、個である一人の接近です。あれこれ作業しながら、来年できることを構想します。きっとできるはずだと、マハラバ文庫番である私は考えるのです。
　さらにコクを増した鯉汁を味わって、今回の支払いを済ませます。この日々に学んだ事を授業料を払ったら、きっと莫大なものでしょう。この頃聞かなくなった言葉ですが、花嫁修業ということを考えます。くらしの中の技、わざを学ぶということ。今の学校教育ではできないのでしょうか。家庭教育でもできそうもないのでしょうか。いのちの教育に責任を持つのは、生きる姿を見せる人。
　帰路は寝ていた記憶ばかりです。帰宅して９時１５分からのワーキングプア�Vを見ます。