インタビュー構成 「おのれの地獄を見きわめよ」―CP(脳性マヒ)者とともに生きて
                                             

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新解放理論研究会

                                     「CP=ケツの穴」
 
―水俣の例なんですが、善意≠ノ満ちみちて、カンパをしたり、闘うぞと拳をふりあげたり
する一般の人たちが、患者さん≠ニいう言い方をしているんですが患者さん≠ニいう言葉か
らにじみ出すものに、原則的に同意できない。なぜ患者≠ナはいけないのか。しかし、推測で
すけれども、大仏さんは、患者さん≠ニはおっしゃらないと思うんです。患者さん≠ナなけ
ればいけないというのは、本人たちは善意≠ナしょうが、頽廃ではないかと思うんです。
大仏 うちの会に関して言えば、ぼくは決してCPだけじゃなくて、「健全者」なわけですよ。
ぼくには「CP=ケツの穴」論というのがあるんです。「差別用語」として受けとる人もいるん
だけれども、CPはケツの穴≠ンたいなもんじゃないかと言っているんです。
「人間の体の中で、ケツの穴はいちばん大切なんだ。手や足は一本くらいなくても生きていけるが、
あまり人前にみせるものでもなくて、恥ずかしくてかくしておくもんだけれども、どうしてかくさ
なければならないかもふくめて、かくさなければならないのはいちばん大切なんじゃないか」なん
て、ときどき冗談にいうんだけれど。
 ほかの人がCPに同情≠オたり、協力≠オたりしてくれるのに、ぼくはCPに対しお説教す
るなんて言うとエライようにきこえっちゃうんだけれど、実際エライと思っているんだけれども、
どっちかって言うと、「しょうがねえ奴らだ」という接し方をしている。だから、ぼくに関係して
いた彼らも「しょうがねえ」と思われている態度でいる。だから、「CP解放」というけど、CP
を解放するには、「マハラバ村」でもそうだけれども、「青い芝の会」でも、CP自身が闘わなけ
ればいくさにならない。ぼくはいくらやったって強力者≠ナしかないんだから、闘う時のスタ
ーター≠フ役目は、ぼくがやったかもしれないけれども、闘うのは彼ら自身であると思っている。
彼ら自身が本当に闘うものをもって、闘ってくれることを望んでいるわけですよ。
 ところが、CP者自身が、いわゆる「健全者文明」と言うか、そういうものになじんじゃって、
CP者自身がCPであることが嫌だという考え、これは抜け切れないです。抜け切れない間、ぼく
ははがゆく思っているわけだ。抜け切れるはずのものでもないし、だけど、うちの解を中心に集ま
ってくれているCP者は、克服しようと闘っているんだと思うんだ。ぼくと彼らとの関係は、あく
までも、「健全者」とCP者の関係でしかない。だけど一般の人は、CPはCPで、一般の人とは
違うと固定してみていると思うんだ。
 ―「水俣」を支援する人たちは、たとえば、しのぶちゃんをみ、そのおやをみ、そのまわりの人
たちをみたときの彼らの考えを、いちばん端的に言えば、しのぶちゃんは何歳で、本来ならば花嫁
衣装だ、いかにチッソが悪いか―この域をついに出られなかったんじゃないかと思うわけです。
大仏 それは脳性マヒについてだって言える。ただ脳性マヒは、水俣チッソという目にみえる敵
がいないだけでね。この敵≠ニ言うのはぼくに言わせれば、人間そのものなんだけれどもね。だ
から、運動としていちばんいいんじゃないかと思って、CPにかかわっていたわけです。今、仙台
の方で、CP者を中心に「社会福祉を考える会」なんてのができたようだけど、あれも、うちの会
の運動のなかに入ってくるでしょう。
 ―「開発反対」とか「公害反対」とかいろいろありましたが、やれ、百姓は土地や人生を金に換
算されて、土地を収奪されて気の毒だとか、追われ追われて難民になるとか、巨大企業がきてどう
だかとか、そういうこともさることながら、最終的には、「反福祉」以外にないと思うんです。と
ころが、たとえどうあれ、「反福祉」と言うと、それは人間的でないわけですね。
大仏 「青い芝の会」が「反福祉」と言えば安全なわけです。「健全者」が言うととんでもないこと
になるけど。

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