　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　無自覚こそ〝敵〟
　―大仏さんにとっての〝敵〟は何ですか。
大仏　この間、マルクスの『経・哲草稿』を読んでいたら、「自覚」というのがでてきた。
「自覚」というのはどういうことかと思って調べてみたら、ドイツ語には「自覚」という言葉
がないんんだ。英語にも、フランス語にもない。それを日本の訳者がかってに「自覚する」な
んて訳した。それは正確には「意識する」ですよ。
「意識する」「理解する」「良心」というのは語源が同じなんだ。そうすると、日本人なら、
中学生くらいになると、「意識する」と「自覚する」の違いは何となくわかる、「意識する」
と「自覚する」がわからないなんて、カントとかヘーゲル、マルクスが日本へ来れば中学生以下
なんじゃないかな。
　ゾロアスターがあげた人間のやらなければならない徳目のなかに、ボーダ＝仏陀＝「自覚する」
ということがある。ペルシャからこちら側は、「自覚する」ということが大事なんじゃないかな。
「自覚」を大切にするというのは、それは仏教の影響でしょう。オリエントから向うへ行く時、
「自覚する」がぬけおちちゃって、それよりも「わかる」とか「理解する」とかになってしまっ
たと思う。
　だから、〝敵〟というのは無自覚な奴らだ。「健全者」だと無自覚に思っている奴らが〝敵〟
なわけだ。もっと言えばテメエの〝業〟（本質的矛盾・罪悪性）を知らない奴だ。
　―「マハラバ村」を「解放区」というかたちでやってこられたわけですが、それが「青い芝」
の母体になったのですか。
大仏　「マハラバ村」がのりこえられたというわけだが、現在は、各地の「青い芝」になって、
「青い芝」そんものが「解放区」というそういう考え方です。「青い芝」では現代文明を拒否し
ていく、したがって、「解放区」―「青い芝の共同体」をつくろうという働きが各地にある。山
形でも、さっそく始めようということだろうが、実際にはなかなかね。静岡でもそういう動きが
あるし、奈良でもつくろうとしている。しかし、どれだけできるかはわかりません。ぼくは、「
青い芝」を「解放区」と考え、それで、〝権力〟を包囲しようと思っています。
　―「青い芝の会」という名前の由来は……。
大仏　ぼくがつけたのじゃないからわからないけれども、芝はふんづけられても根が切れないと
いう意味らしい。
　ぼくは、東京都に第二種福祉事業団体の認可を申請したんですが、その時、「青い芝」だけで
はお粗末だから、「日本脳性マヒ者協会」（青い芝の会）としたら、後で役員会で、「相談し
ないで名前をつけた」とおこられてしまったけれどね。だから、今はいちおう「日本脳性マヒ者
協会」と言うのが名前になっている。その時うちの規約を提出したら、「これじゃ社会福祉事業
団体に認可できない」と言われた。なぜかと聞くと、「社会福祉事業の概念にあてはまらない」
と言うんだ。「テメエたちが、テメエたちで幸せになりましょうというのはテメエ福祉」で、
〝社会福祉〟というのは、「誰かがだれかのためにやるもの」だ。「青い芝の会」は、自分たち
の権利を確立しましょう。と言っているので〝社会福祉〟とならない。
　これが社会福祉に対するお役所的な考え方でね。そのことは、今でも一貫していて、この「実
態調査」なんていうのも、「社会福祉はお役所がやるものだ。青い芝の脳性マヒ者は対象者でし
かない」という考え方です。
　仕方がないから、うちの会は「会員相互の親睦」とか「権利の拡充」とか、そのほか、「事業」
とか「宣伝活動」なども加えて、何とか認可された。それはそれでいいけれども、認可されると、
金をもらう方じゃなく、出す方になっちゃう。だから、こちらが「赤い羽根をお願いします」な
んてことになってしまう。

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